骨髄由来幹細胞点滴とは?

骨髄由来幹細胞点滴とは、自身の体内にある骨髄から骨髄液を採取し、その骨髄液の中にある幹細胞を培養して大量に幹細胞を増やし、点滴で体に戻す治療です。 今までは根本的な治療がない(困難)と言われていた病状に対して、損傷された細胞を修復させる、新たな細胞を体内に収着させ再構築させ、脳卒中や脊髄損傷の後遺症の改善を目指す治療です。

骨髄由来幹細胞点滴とは?

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※資料提供:医療法人慶春会福永記念診療所

骨髄由来幹細胞点滴とは、自身の体内にある骨髄から骨髄液を採取し、その骨髄液の中にある幹細胞を培養して大量に幹細胞を増やし、点滴で体に戻る治療です。

今までは根本的な治療がない(困難)と言われていた病状に対して、損傷さ​​れた細胞を修復させる、新たな細胞を体内に収着させ再構築させ、脳卒中の後遺症の改善を目指す治療です。

幹細胞治療の特徴

幹細胞とは?

幹細胞とは、自己を複製し続ける自己複製能と、体の様々な細胞に分化できる多分化能を持った特殊な細胞です。幹細胞は、その分化する能力により分化全能性、多能性細胞に分けられ、分化が進むにあたり分化する細胞種も絞られる。

骨髄由来幹細胞治療で使用する細胞は、間葉系幹細胞という細胞で骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞、また神経細胞や肝細胞にも分化する能力を持っている細胞である。

間葉系幹細胞は、ES細胞やIPS細胞が1つの細胞からすべての臓器や、組織を形作ることができるのに対して、間葉系幹細胞はそこまでの分化能や増殖能はないその代わりんんん
間葉系幹細胞は、骨髄や脂肪から採取でき、ES細胞やIPS細胞が抱えている課題やリスクが少なく利用しやすい細胞で、研究の歴史も長く臨床応用も盛んにおこなわれている。
脳卒中の治療に利用される幹細胞は、様々な研究で損傷部位に多くの細胞が遊走(移動)していくことが観察されており、骨髄由来幹細胞治療は、この幹細胞の能力を治療に応用。
間葉系幹細胞は損傷している部分や炎症を起こしている組織に遊走する傾向がある。
Chapel A et al.,J Gene Med 5:1028-1038, 2003; Nasef A.,Transplantation 84+L97:231-237, 2007
中枢神経障害モデルラットに対する間葉系幹細胞の静脈内投与により、投与された間葉系幹細胞が損傷領域に選択的に遊走する。
Honma et al., Exp Neurol 199:56-66,2006; Horita et al., J Neurosci Res 84:1495-504, 2006; Liu et al., Brain 129:2734-45, 2006;
Onda et al., J Cereb Blood Flow Metab 28:329-40, 2008;Ukai et al., J Neurotrauma 24:508-20, 2007; Toyama et al., Exp Neurol 216:47-55, 2009
間葉系幹細胞には、脂肪由来や、骨髄由来の細胞があり、骨・軟骨・脂肪・筋肉・血管・神経等への分化能力をもっているが、その中でも骨髄由来幹細胞は神経細胞に分化する可能性性性性性性が高く、脳卒中(脳梗塞・脳出血)や脊髄損傷(頚椎損傷)において、神経再生への臨床効果の報告が一番豊富。

骨髄由来と脂肪由来の違い

骨髄由来間葉系幹細胞 脂肪由来間葉系幹細胞
神経再生能 ×
神経細胞への分化 ×
幹細胞の含有率 0.001~0.01% 0.5%~
増殖率(培養し易さ)
骨・軟骨・血管への分化
神経サイトカイン効果
採取 経験が必要 容易

骨髄由来幹細胞点滴の期待できる効果

運動機能の改善

  • 手足や体の感覚が徐々に回復する。
  • 手足に力がはいるようになる。
  • お箸を使用して、自力で食事がとれるようになる。
  • 歩行不能状態から歩行器を使用しての歩行が可能となる

失語症・言語障害の改善

  • 言葉や文字の理解が出来る。
  • 発声が出来る。
  • 読み書きが出来る。
  • 意思の疎通が円滑になます。

感情や行動の改善

  • 怒りっぽい性格が穏やかな性格に戻る。
  • 衝動的な突然の動きや、行動が無くなる。
  • 感情の起伏をコントロールできる。

視力障害の改善

  • 視力が回復する。
  • 景色がはっきりと見える。
  • 見える範囲が広がる。
  • 二重に見える事が無くなる。
  • 視野欠損が解消される

痺れ・痛みの改善

  • 肩こり、腰痛、頭痛、関節痛、筋肉の痛みの軽減。
  • 脱力感の軽減。

骨髄由来幹細胞点滴の臨床研究

脳梗塞患者12名に対して自己骨髄性間葉系幹細胞の静脈投与を実施した結果、脳梗塞巣体積の減少がみられ、12人中7人でNIHSSスコア(脳卒中重症度スコア:高値は悪い)が改善。
幹細胞投与後も、出血、肺塞栓症、腫瘍化等の重篤な合併症は無く、有効性を確認。

また、脳梗塞発症から130日以後に幹細胞を投与したところ、脳梗塞巣体積が縮小し、NIHSSも8→0点へ改善しました。これにより幹細胞投与は慢性期であっても効果があると考えられ、また、自己骨髄性間葉系幹細胞の静脈投与により、脊髄損傷、脳梗塞、再発の予防、動脈硬化の改善、認知症・心不全・腎不全・肝不全・アンチエイジング等の効果が続々と明らかになっています。


Honmou et al., Brain 134:1790-1807, 2011

骨髄由来幹細胞点滴の治療の流れ

治療期間の目安:1クール(3回投与)4~5カ月間
通院回数:5回
検診・経過観察:治療終了後から6ヶ月後もしくは1年後

一般的な治療の流れ

問診

状態や、過去の検査データをもとに、治療適応の有無を判断。

医師が治療可能と判断した場合は、感染症検査のための採血。

採血結果が出て、結果に問題がなければ約2~3週間後
採取した骨髄液は厳重な保管を施し、温度管理を維持したまま培養センターに輸送されます。
幹細胞が増えており問題がないことを医師が確認したら、骨髄採取から約1ヶ月後に点滴投与テキスト

点滴にかかる時間は、約1時間、点滴後30~1時間の様子観察

※幹細胞点滴3回の場合、点滴投与は約1ヶ月期間を空けて3回実施

なぜ3回投与なのか?

神経障害に対する幹細胞治療のメカニズムは、
主に①液性作用、②血管新生作用、③神経再生作用といった3つの相性の効果を期待され
①~③に合わせて長期におけるリハビリの併用が必要となります。

【3相性の効果】
①液性作用(極めて早い)
②血管新生作用(数週~)
③神経再生作用(数週~数か月まで漸増)
また、神経損傷が起こった場合に、それを修復するための神経回路を再構築していくためには、出来るだけ早期に、更に出来るだけ長い期間にわたり、①~③の作用を高い状態に保ち続けることが治療上有効と考えられています。

骨髄由来幹細胞点滴の概要

治療法 骨髄由来幹細胞治療
適応疾患 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)後の後遺症
適応期間 亜急性期~慢性期
治療の対象者 脳卒中後、慢性期の方
治療に不向きな人 劇的な改善や、早期の改善を求める方
保険適用の有無 保険外診療
費用 350万~
治療期間 半年~1年
施術期間 1~2時間/回
通院頻度 1か月に1回程度
エビデンスレベル
症例数
症例数
症例数
入院 不要
リスク・副作用 ●局部麻酔によるリスク・副作用
痛み/アレルギーによるショック症状
●骨髄穿刺によるリスク・副作用
皮下出血/皮下血腫/感染症/穿刺部の不快感
●骨髄幹細胞投与によるリスク・副作用
肺血栓塞栓症/アレルギーによるショック症状/感染症/点滴刺入部の発赤/熱感
●その他のリスク・副作用
新規治療のため未知のリスク・副作用の可能性あり
既存治療への影響 なし
仕事や生活への影響 なし