脳卒中の治療と、リハビリの現状

脳卒中

脳卒中の治療と、リハビリの現状

脳卒中の治療とリハビリは、一昔前に比べ進歩を遂げており、最新の治療とリハビリでほとんど後遺症を残さずに社会復帰をされている患者様も増えています。また、新しい治療として発症から数週間~数か月たった患者様に対して再生医療で後遺症を改善する治療も提供されるようになりました。
現在どのような治療とリハビリが行われているのでしょうか。

監修医師貴宝院 永稔(きほういん ながとし)
医療法人慶春会 福永記念診療所 部長
医療法人交和会 リブラささしまメディカルクリニック 部長
ニューロテックメディカル株式会社 代表取締役

脳卒中とは

脳の血管が詰まるか、破れるかして脳細胞に血液が届かなくなり、脳神経細胞が損傷を受けて機能しなくなってしまう病気です。
「脳梗塞と脳卒中って何が違うの?」と思っている方も多いと思いますが、「脳梗塞」は「脳卒中」のなかの血管が詰まってしまう病態を指しています

 

脳卒中の分類

発症する割合は、脳梗塞が全体の7割、脳出血が全体の2割を占めています。
また、寝たきりの原因として脳卒中は、1位、発症は30代以降で増えてくる病気です。

脳卒中の治療の流れ

脳梗塞では、2005年にt-PAが、2010年に血管内治療が保険適用され積極的な脳卒中治療が行われるようになり、急性期の治療について大きく発展しています。
さらに新しい治療として急性期~維持期においても再生医療や、新たな機器・薬剤での治療が進んでいます。

超急性期治療

  • 脳梗塞:
    • t-PA(発症後4.5時間以内)
    • 血管内治療(発症後8時間以内)
  • 脳出血:
    • 外科手術
    • 内科的治療

急性期治療

  • 内科的治療
  • 再生医療(骨髄由来幹細胞治療)
  • 急性期リハビリ

回復期治療

  • 内科的治療
  • 再生医療(骨髄由来幹細胞治療)
  • リハビリ

維持期治療

  • 内科的治療
  • 再生医療(骨髄由来幹細胞治療)
  • リハビリ

脳には可塑性がある

脳は脳卒中で傷害を受けた場合、発症後の動きと同じか、もしくはそれに近い動きができるように脳組織の構造や、神経ネットワークを再構築することがわかってきました。
そのような変化は「神経可塑性」と呼ばれており、この神経可塑性がピークに達する時期は、脳卒中後1~3か月と言われています。

急性期の治療では、早期に血栓を除去して、まだ救える脳神経細胞を救うこと、リハビリと再生医療は、脳の機能が回復しやすい、より早い時期から初めることが重要です。

脳の可塑性

脳卒中の治療とリハビリ

脳梗塞:t-PA(発症後4.5時間以内)・血管内治療(発症後24時間以内)

脳梗塞では、近年超急性期の治療として血栓を溶解する治療、血栓を回収する治療が発達し、治療を受けれた患者様は、予後の良い状態での社会復帰を果たしていますが、両治療共に課題は発症後4.5時間以内、24時間以内で治療を完了させる必要があることと、どこの病院でも対応可能な治療ではなく、専門の病院での治療になります。

脳梗塞の兆候が現れたら、一刻でも早く専門の病院を受診できるように普段から近くの医療機関を確認しておきましょう。

再生医療(自己由来・他家由来幹細胞治療)

患者自身、もしくは他人由来の幹細胞を培養して静脈点滴で体に戻してあげる治療
他人由来の幹細胞を利用した治療は、現在開発が進められており超急性期の治療が間に合わなかった患者様に対して、二次障害の拡大を軽減する目的で研究が進められています。

自己由来の骨髄由来幹細胞治療は、一部保険では発症後31日以内の患者様に限り保険適用の治療となっています。
ただし、保険適用の範囲が限定的なため希望する患者様皆様が受けられる治療ではありません。
自費診療としては、厚生労働省の認可を受けたうえで急性期~回復期以降の患者様にも治療を提供している医療機関があります。
脳卒中に対する骨髄由来幹細胞治療は、障害の程度や、受傷してからの期間によりどの程度の効果があるかは、個人差が出てしまいますが、発症後から期間がたった患者様でも後遺症の程度を軽くしてQOLが向上する可能性があります。
発症後からお期間が短ければ短いほどリハビリと併用することでの神経の回復も期待できます。

脳梗塞の時間経過と治療

ニューロテック®(神経再生リハビリ)

rTMS(反復性経頭蓋磁気刺激)

健康な時には左脳と右脳は、どちらかの働きが強くなりすぎないようにお互いに「つりあい」を取っています。脳卒中後は「つりあい」がとれなくなり、受傷した側の脳が動きにくくなります。
rTMSは、病側大脳の特定部位に頭の外から刺激を与えて神経の活動性をたかめたり、健側大脳に刺激をあたえて、健側側の活動を抑制して「つりあい」を取りやすくしてあげる治療です。実際に、上肢麻痺、失語症、片麻痺に対する複数の有用性の報告もあります。

資料提供:医療法人慶春会福永記念診療所

低周波治療(電気刺激療法)

神経障害による運動麻痺により、必要な可動範囲を自分で動かせないでいると、それ以上の改善は難しくなります。必要な可動域を自分で手足を動かすのに必要な筋力が少なくても、低周波によって筋肉の収縮を補助することで、手足を動かせる範囲を拡大する治療です。

関連治療

用語説明

rTMS(低周波数反復経頭蓋磁気刺激法)

低周波数反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)は、傷害を受けていない側の運動野を抑制し、高周波数rTMSは傷害を受けた側の運動野の興奮を増大させることで脳卒中後の機能回復を促進すると推測されている。